『慰めあう事』それは時に残酷…。
人間って、何かの壁にぶち当たった時や、友達と試験を受ける時とかに、言ったりするじゃないですか?
「○○ちゃんも出来ないから、まぁいっか!」
「自分だけじゃないから、気にしない気にしない」
「あの子の方が自分より下だから安心安心」
「うちらって似た者同士よね~」
僕、知ってるんです!
この考えは間違ってるって。
僕はその事を、小2の頃に気付きましたって話。
・友達であり、ライバルでもある『こうちゃん』
こんな僕にも、仲良しな『こうちゃん』って友達がいました。
こうちゃんと僕は水泳が大嫌いでした。もちろん泳げないから。
でも夏になると、しつこいぐらいに体育の授業と言えば水泳。
そして、泳げる距離を計るんです。毎回毎回。
僕たち何も悪い事してないのに、毎回距離を計るんです!
泳げない僕達からしたら、もう本当地獄。
周りのみんなは25メートルまで泳げなくても『ばた足』とか『犬かき』とか、色々な技を使ってスイスイ泳ぐ。
僕とこうちゃんは、がむしゃらに壁をトーンと蹴って2メートル程度。
『泳ぐ』と言うより
『顔が水に付いたらすぐに立つ!』
そんな感じでした。
それでも良かった。だって僕とこうちゃんは仲間だから
泳げない者同士で低レベルな戦いをしてた。
「あれれぇ~。こうちゃん、そんだけ?僕の勝ちだね!」
「ねぇ、こうちゃん知ってる?2メートルの向こう側…」
なんて。
少しだけ、僕の方が脚力の強さがあってか、こうちゃんより泳げたんです。
こうちゃんは良く言ってた。
「別に泳げなくてもいいや…ダメ男君も泳げないし…」って。
僕、その時思ったんです!
「あーこれが信頼関係か」って。
そんな僕とこうちゃんには『絆』が生まれた。
そして夏休みに入っていった。
夏休みが終わると、また水泳の授業
9月に入ったのに、まだ水泳の授業があった。
最後にまた泳げる距離を測るつもりだろう。
でも大丈夫!僕とこうちゃんには固い絆が生まれてる!
サイヤ人が地球に来た時のピッコロの勢いで
「距離でも何でも計って見やがれぇ!」って。
「ハエ見たいなもんか試して見やがれぇ!」って具合。
ねっ、こうちゃん。
で、僕の距離は変わらず2~3メートルだった。
自分の中ではまずまずの成績。
「この景色、こうちゃんにも見せてやりたい!2メートルの向こう側を…」
そして、こうちゃんの出番がやってきた。
『絆』が生まれた僕とこうちゃん!
応援しないわけがない!
「頑張れこうちゃん。大丈夫。落ち着いて!」
僕は祈るような気持ちで見た!
僕の目にうつるこうちゃんは、まるで
「やったんでぇ~」
とでも言わんばかりに、しっかりゴーグルをして、心なしかキャップも被りすぎな程に被っていた!
そして、調子にのって飛び込みの体勢をとっていた
「こうちゃん、壁トーンでしょ壁トーン!……あ!わかった。そうやって飛び込んで距離を伸ばす作戦ですか?おやおや、賢くなりましたねドドリアさん」
僕の想いは届かず、こうちゃんは、僕の目の前から消えた……。
『潜水』ってやつですか?
こうちゃん、プールの底の方で『クイクイ』して泳いでる
「なにそれ?人魚かな?」って勢いで『クイクイ』してる。
え?こうちゃん?
━━別に泳げなくてもいいや━━
こうちゃん…待って…
━━あーこれが信頼関係か━━
こう…さん?
━━2メートルの向こう側━━
━━━━『絆』……。
「超気持ちいい~!!」
なんて聞こえてきてもおかしくない泳ぎ!
こうちゃんは頑張ったんだ。
きっと、夏休みの間、努力してたんだ……。
僕が自由研究で『アリが食べるもの』なんて研究してる間、こうちゃんは頑張ったんだ。
「アリさん、キュウリ食べるかな?」
ってやってる間、練習してたんだ。クイクイしてたんだ。
「アリさん、鼻くそ食べるかな?」
って無駄な研究してる間、こうちゃんは自分の壁を越えたんだ……。
・僕は、その夏、学んだ
同じ境遇の『出来ない壁』を持った同士!
その壁を『助け合い』と『共に壁を破る気持ち』
それが大事だったんだなぁって。
出来ない者同士で『慰めあう』事は間違ってたんだ。
沢山の事を学んだような気がした、小2の夏!
アリは『鼻くそをスルー』するんだ。
少し、賢くなれた気がした、小2の夏!