一匹のダメ男でも誰かの役にたてたら良い日記

足のニオイが人一倍臭いダメ男が「こんな僕でも一万人に一人にぐらい役にたてたら」と思いながら書く日記

【小説】ミカン夫婦とネコの話

小説に触れる機会がなかなかありませんが、旬のトピックのようなので、僕もチャレンジしたいと思います!

トピック「短編小説の集い」について

http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2014/09/18/121657

【リンゴ】がテーマのようですね!

・【小説】ミカン夫婦とネコ

むかーし昔、あるところに
ミカンが大好きで、ミカンばっかり食べている、おじいさんとおばあさんがいました。


ある時おじいさんは栄養の偏りを気にして

「ビタミンバランス!!」

と言い、山へとリンゴ狩りに出かけました。


おばあさんは、いつものように『ごきげんよう』を見ながらミカンを頬張ってました。


思う存分リンゴを食べたおじいさんは思いました。


「やっぱりミカンの方が美味しいな!わし、もうリンゴはいらん」

と。

おじいさんはリンゴに飽きてイライラし、手に取ったリンゴを捨てました。


すると、『待ってました!』とでも言わんばかりに 、突然ネコがリンゴに飛び付いて食べ始めました。


「なんじゃ、このネコは?ふふふ、バカなネコじゃ!」


おじいさんはネコの食べっぷりを気に入り、リンゴを取ってはネコにやり、を繰り返してました。


「リンゴよりも、ミカンの方が美味いぞ!どうじゃ、家に来るか?」


ネコの意見など全く聞く気もないおじいさんは、我が家にネコを持ち帰りました。


「ばあさん、このネコにミカンをあげてくれないか?」


残り少ないミカン。ばあさんは嫌々ながらにも一つネコに食べさせました。


ですが、ネコはミカンを吐き出してしまいました。


どうもこのネコはリンゴの方が好きなようです。


「ミカン美味しいのに…。よし決めた!このネコがミカンをガツガツ食べるまで家で飼うぞ!」


おじいさんの独断でネコを飼う事になりました。


名前は『タマ』


「ネコっぽいから良くね?タマで」

というおばあさんの発言で決まりました。


子供に恵まれなかったおじいさんとおばあさんにとって、タマは我が子のように育てられました。


ミカンを食べないタマを、しかったり

リンゴを食べたいタマがぶちギレたり

タマがおじいさんをボコボコにしたり


タマの事も考えて、食卓にはミカンミカンミカンたまにリンゴ



おじいさんもおばあさんもタマも幸せに暮らしてました。

・数年たったある日

いつものように、おじいさんがタマにミカンを食べさせていると

突然タマが『ブルブル』と震えだしました。

異常な程に。


慌てたおじいさんは


「病院じゃーぁ!」


とブルブル震えるタマを抱き抱え、動物病院へと走りました。


おばあさんは


「西野かなじゃね?」


とつぶやきながらも、おじいさんの後をついていきました。


「タマを助けてくれぇー……」


病院に着くとおじいさんは先生にお願いし、容態を見てもらいました。


先生は、院内でミカンを頬張ってるおばあさんを横目に口を開きました。


「ネコに何食べさせました?」


おじいさんはキチンと伝えました。


「ミカンミカンミカン、たまにリンゴじゃ!」

と。


「でしょうねぇぇえー!!」


と、叫びながら、おじいさんのコメカミをぶん殴る先生。


「ネコは魚を食べるんだー!」


と、『もう一回ぶん殴るぞ!』のジェスチャーをする先生。


「だってミカン……美味しいから……」


と反論するおじいさんでしたが、先生がメリケンサックをチラつかせてたので、流石のおじさんも黙ることにしました。


「ミカンばっかり食べさせるから、栄養バランスが偏ってます。このままでは、死ぬまで西野かなです」


先生は続ける。


「私の知り合いに、魚とゆかりのある一家がいます。ネコを助けたいなら、その一家に引き取ってもらうように頼みますが?」


おじいさんは悩んだ。


楽しかったタマとの暮らし。


最近ようやくミカンを受け入れ始めたタマ


しかし、このままではずっと西野かな


悩むおじいさんの肩に『ポン』とシワシワな何かが当たった。


おばあさんの手だ。


おばあさんは首を縦にふり「うんうん」と言う。

それはまるで

「タマを助けてもらいましょう!」


「元気が一番」


「反発したらメリケンサック、くるよ?」


と言いたげな目。


おじいさんは決めた!


「先生、お願いします!タマを元気にしてください!!」


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どれくらいの月日が流れたのだろうか…

タマとお別れをしてからおじいさんは、明くる日も明くる日も、タマの事を考えてました。


「タマ、病気治ったかなー?」


がおじいさんの口癖になるほどに。


でも、おじいさんは『タマが帰って来なくても、どこかで元気に生きていればそれで良い』と考えてました。


本当は一緒に暮らしたい気持ちもあるが、この家の食卓は毎日ミカンばかりで、また同じ病気になるだろうから……。



突然、何かを想ったおじいさんは


「ビタミンバランス!」


と言い立ち上りました。


そう、また栄養バランスの偏りが気になりだしたのです。


さっそく山へリンゴ狩りをしに向かおうとしたおじいさんに突然、おばあさんがしがみつきました。


「わしも連れてけ。ごきげんよう今日休みや!」


この日は日曜日。

おばあさんは『ごきげんよう』が休みなので暇だったのです。



二人で仲良くリンゴ狩りに行くことになりました。




「ここでなぁー、初めてタマに会ったんやぁ」


とおじいさんは何度もしつこく話す。
嬉しそうに。


「ふーん、そっか」


と聞き流すおばあさんでしたが、実はおばあさんも楽しく聞いていた。



少し、家にリンゴを持ち帰る事にしました。



「久しぶりにリンゴ食うか?」


とおばあさん。


食卓に並ぶリンゴ。


「たまにはリンゴも良いな」


と上機嫌なおじいさん。



すると、テレビからテンポの良いメロディーが流れてきた。



『サザエでございまーす!』


から始まるそのメロディーは、おじいさんとおばあさんの目を奪った。


そして、二人の目を疑う光景が写り混んだ!!



「タ、タマーァァぁぁ!?」



そう、あの『タマ』が元気な姿で踊っていたのです。


右に左に腰をクネクネさせて!!


「ばあさん!!タマがっぁあ…ぁぁぅあ」



「ええ、見てますよ。元気になりましたね…」



おじいさんは涙をこらえリンゴを丸かじりして、つぶやいた。

「タマ……。ふふふ、バカなネコじゃ…」


タマは魚にゆかりのある一家と一緒に、元気に暮らしていた。

おじいさんとおばあさんは、そんなタマの姿に安心し


「思い残す事はない」


と、数年後、この世を去った…。


タマは踊り続けた。毎週、日曜日の夜6時30分に。


楽しい暮らしの中で、少しずつ好きになっていた

おじいさんとおばあさんが大好きな『ミカン』の中で。

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